私にとって音楽は、絵を描く上でたいせつなもののひとつです。
それは作画中に聞こえる音によって、絵の仕上がりに影響を与えてしまうほど。
絵を眺めていると音が聴こえてくるような気持ちにさせられる事があるのと同じように、音楽を聴いているとその情景が浮かんでくると思います。そしてさらに強く思い浮かべられたなら、ひとつひとつの音色が色やテクスチャとして感じさせてくれます。
たとえばCm7の和音には、シアン強めでマゼンタとイエローを◯◯ぐらいずつ感じるなぁとか、あるコード進行には色の遷り変わりをイメージしたり。アコースティックだと彩度を抑え気味に、ロック調アレンジにはブリリアンス強め、などなど。
こうして音に含まれるものが様々なイメージを伝えてくれる為に、描いている絵に流す音楽をあわせておかないと、絵が音に引っ張られてしまい目指した作風にたどり着けないことさえあるのです。
その逆に、音楽から絵を起こすときには、楽曲に込められたイメージをひとつひとつ丁寧に拾っていくことになります。
絵画は受け止め方を鑑賞者に委ねる部分が多いのに対して、音楽は絵画と比肩できないほどの圧倒的な情報量を鑑賞者に注ぎます。メロディーやテンポ、編曲、構成される音色と多くの要素がある上に、歌詞がある場合には連ねた言葉が具体的なイメージを膨らませます。ある瞬間をえがいた楽曲ならば端的に絵にもできますが、年月の流れまでも込められていることがあるのです。
いわばPVを観せられているようなもの。
ある1曲から絵を起こすのは、5分前後のPV映像を脳内生成した上で、それをポスター1枚にいかに収められるかという作業に近いものがあります。
私の場合の実際の作業工程としては、
まさにその通りに、何十回とその楽曲を聴き潰して、紙芝居のように浮かび上がる絵を並べ、そこからすべてを集約させた1枚絵を描き起こしていきます。
ですが、CDジャケットデザインは音源の制作作業と並行して行われますので、当初渡されるのはラフ音源です。そこから徐々に磨き上げられ、さいごCDに録音される音源へとミキシングされていくのですが、そのさいごの仕上げ時に驚くほどの変化を見せます。
それは絵を描く方にはわかると思うのですが、絵の完成直前、細部の煮詰めをしていくと絵は見違えますよね。まさにその状況が音楽でも起きます。
先述のとおり、音階が色を、調がトーンや色合いを、和音や旋律の重なりがさらに様々な色調を生むのですが、およそのイメージをラフ音源段階で定めても、完成音源では思っていたのとまったく色味が違う、となると何度でも描き直します。
さらに、絵の仕上げ段階では、幾たびも聴き返しながら、色を加え、形を磨き、イメージに近付けていきます。
「あぁ、この青じゃない…」
「もっとここの黄色彩度高い!」
と少しずつ、少しずつ。
これだけひとつの楽曲に対して入り込む工程を踏みますので、悲しい曲にシンクロし過ぎて鬱になることさえありました。
それほどに、絵描きにおける音楽とは大きな意味合いを持っているのです。
私はエレクトーンを多少嗜む程度に弾くのですが、エレクトーンをこれほど長く愛し続けていられるのは、音と旋律の重なり合いが美しい光景をえがいてくれて、それを自分独りの手で創り出せるからです。
ひとつひとつの楽器がそれぞれに持つ魅力も捨て難いのですが、やはり私はその音色が重なる交響楽に惹かれます。そんな様々な音色とその重なりを一台で表現できる楽器であり、奏者として楽しみつつ、指揮者にもなれるエレクトーンは、私にとって最適だったのです。
私のオリジナル作品の中には、そっとある楽曲をテーマにして、弾きながら思い浮かべたイメージを描き起こしたものもいくつかあります。
そんな絵から感じる音楽は、鑑賞者に委ねられ、それぞれに違った音が奏でられるのですが、それが私にはとても嬉しいのです。
これからも絵と音楽を共に楽しみながら、音を感じられる作品創りができればと思います。
そんな音楽CDジャケットデザインとその作画をさせて頂いた米田菜穂さんのお店で、
ワークショップを開いています。
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米田菜穂「来夏」
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米田菜穂「秋雨に塗る」
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米田菜穂「桜の独り言」
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米田菜穂「風の日」
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eternal
杏里「OVERSEA CALL」より
(杏里Back to '80s Art Wind出展作品)
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Lost
杏里「悲しみがとまらない」より
(杏里Back to '80s Art Wind出展作品)
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Twinkle sky
杏里「SUMMER CANDLES」より
(杏里Back to '80s Art Wind出展作品)