色鉛筆画家のカケラ

色えんぴつで絵を描いて暮らす画家の雑記帖 

私が画家になった理由

私が画家になろうと決意したのは、
子供の頃なりたいと最初に言葉にした職業が “画家” だったことを思い出したからです。


f:id:kazuyuki_yae:20200713100325j:plain画家になりたいと言い出したのは、幼少時にアニメ「フランダースの犬」を観ていてのこと

当時母親にネロのような思いはさせられないと
断固あきらめさせられたものの、駄々こねて絵描き教室には通わせてもらっていました。

「フランダースの犬」は、1870年頃のベルギー・フランダース地方を舞台に、絵を描くのが得意な少年ネロと祖父ジェハンが貧しいながらも人々の好意に助けられ暮らしていたものの、最後すべてを失いひとりきりになったネロが愛犬パトラッシュと、ルーベンスの絵の前で静かに天に召されてしまうお話。


そんなネロの絵が大好きでした。



「ネロの絵?」と聞かれることもしばしば。
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作中でネロはたくさんの絵を描いています。
もちろん実際にネロが描いたわけではなく、アニメーション作家さんが描いたものなのですが。
今でもコンテ画、そしてそれに近い質感の色鉛筆が好きなのはここがルーツのようです。

 

私がきっちり描き込まないで
筆跡を荒く残すのが好きなのも、
セピア調の作品が多いのもそのせいかもしれません。

 


f:id:kazuyuki_yae:20200713100333j:plainネロがよくスケッチした風車。





f:id:kazuyuki_yae:20200713100337j:plain老犬パトラッシュ。

 





f:id:kazuyuki_yae:20200713100342j:plain幼馴染のアロア。







めずらしい着彩されたものも。
貧しく絵の具を買えなかったネロが思い描いたものとして登場します。

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f:id:kazuyuki_yae:20200713100439j:plainf:id:kazuyuki_yae:20200713100436j:plainそして夜空にも絵を浮かびあがらせます。
まるでチョークアートのような美しさです。








f:id:kazuyuki_yae:20200713100444j:plainコンクールにはおじいさんの絵を出そうと決意して、
どんなおじいさんを描こうかとたくさん試みます。




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f:id:kazuyuki_yae:20200713100508j:plain大人たちはいいとこの坊ちゃんが描いた“上手”な絵をコンクール1位に。

得票差で惜しくも落選してしまったが、
ネロの絵こそ将来の可能性を秘めており、
ルーベンスの後継として引き取り育てたいと、審査員のひとりだった世界的有名画家が直接訪ねてきます。

 
f:id:kazuyuki_yae:20200713100516j:plainしかしひと足違いでネロに会えなかったその画家は、残された絵を見つめネロの才能を惜しみます。

ネロが天使を描くのは、
物心つく前に他界した母との唯一の記憶。

母が祈りを捧げていたのはルーベンスの聖母被昇天画だったのです。

 


f:id:kazuyuki_yae:20200713100520j:plainf:id:kazuyuki_yae:20200713100524j:plain小学生の頃、私はゴッホの「アルルの跳ね橋」を何度も模写していました。

なぜだったのかわからなかったの
ですが、フランダースの犬を見返すと、ネロがいつも通る道に似た跳ね橋が描かれていて、その影響だったのかもしれません。

 

f:id:kazuyuki_yae:20200713100528j:plain私が風車をよく描くのも

 

 

 

 

f:id:kazuyuki_yae:20200713100533j:plainキャスケット帽が好きなのも

 

 

 

 

f:id:kazuyuki_yae:20200713100537j:plain猫より犬が好きなのも

 

 

 

 

f:id:kazuyuki_yae:20200713100542j:plainコンクールがきらいなのも

この物語の影響かもしれません。

 

 

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そしてアントワープ・ノートルダム大聖堂は、
ネロとおじいさんが毎日アントワープの街へミルクを運んでいましたので、物語の象徴としていつも登場します。

ネロが憧れたルーベンスの絵が飾られているのも、
さいごパトラッシュと天に召されたのもこの大聖堂です。

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こうした想いから、私が画家になる前に描いた初期の作品ですが、
当時は、自分がなぜこれを描きたいのかはっきりと思い出せていませんでした。
いつかまた描きたいです。

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f:id:kazuyuki_yae:20200713100552j:plainじつはこの大聖堂を第3話で画家が描いていて、ネロはその場面に出会います。
そして絵に興味をもつ少年に画家は諭すのですが、
この人こそが最終話でネロを高く評価した画家ヘンドリックです。

この時の少年の絵が、のちのコンクールで自身が推したものとは知る由もありません。

 

 

「目をつぶってごらん。教会がどんな形をしているか見えるかね?

私は目をつぶっても細かいところまでよく見えるよ。
当たり前だな、ひと月も眺めていたんだから。
これを描きたいと思ったら毎日毎日見てるんだよ。

そして心で見れば目をつぶっても見えるんだ。
あの教会を見て何を感ずるかね?
ふむ、高いと思ったらその高さを絵に描けばいいんだよ。」

(ヘンドリック・レイ)      

 


画像資料:「フランダースの犬」©NIPPON ANIMATION CO., LTD.
 


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【物語のあらすじ】「フランダースの犬(アニメ)」wikipedia より抜粋
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ある村にネロという心の優しい少年がいた。彼は両親を幼くして亡くし、祖父と二人暮らしで一緒に牛乳運びの仕事をしながら暮らしており、ガールフレンドのアロアとは大の仲良しだった。

ある日のこと、ネロは乱暴な飼い主に休ませずこき使われている老犬のパトラッシュと出会った。弱った彼を助けたネロはパトラッシュを飼うことにした。パトラッシュと出会ってからはネロは、彼やアロア、友達と楽しく過ごしていた。

しかし、それもつかの間だった。ある時、優しかった祖父が死に、ネロとパトラッシュは悲しみに暮れる。
更にしばらくたったある晩、アロアの家の風車小屋が火事になってしまった。アロアの父のコゼツは前からネロを嫌っていたせいか、ネロが犯人ではないかと疑いだす。それ以来、コゼツに逆らえられない村人たちは、ネロに牛乳運びを頼もうともしなくなってしまった。


祖父の死、火事としての疑いによって仕事を断念、そして念願の夢だった絵画オーディションの落選、絶望の連続に暮れたネロは家にパトラッシュと全財産を残して去ってしまう。


クリスマスの夜、風車職人の老人からネロは無実だという話を聞かされたコゼツと村人たちはネロに謝罪するために、ネロの家に向かい、さらに絵画コンクールの審査員がネロを引き取りに来たが、ネロは既に姿を消した後だった。村人たちは何とかネロを必死に探すが、すべてが手遅れだった。


パトラッシュは大聖堂でルーベンスの絵を見ながら行き倒れになっているネロを見つけた。
ネロはパトラッシュに「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ。」と言う。
そして、ネロは両親や祖父のいる天国へと旅立った。もう辛いこともなく、いつまでも末永く平和に暮らすのだった。